【相続、知らないと大変!】相続人不在財産、過去最多768億円!相続人不在で家が国に!? 増加の背景と対策をわかりやすく解説

はじめに

近年、日本社会では少子高齢化や未婚率の上昇が進んでいます。その影響を受け、相続人がいないまま亡くなる人が増え、その結果、相続人不在財産も増加しています。2023年12月24日、NHKニュースによると、2022年度の相続人不在財産は過去最多の768億円に達しました。これは2013年度の336億円から約2倍の増加です。相続人不在財産とは、亡くなった人が残した財産のうち、相続人がいないために国庫に帰属する財産のことを指します。本稿では、相続人不在財産の現状と課題、そして対策について以下のように解説します。

1. 相続人不在財産の現状
2. 相続人不在財産が発生するケース
3. 相続人不在財産の処理の流れ
4. 相続人不在財産の課題
5. 所有者不明マンション問題
6. 相続人不在財産を防ぐ対策
7. まとめ

1. 相続人不在財産の現状

相続人がいない場合、被相続人の財産は、家庭裁判所から選任された相続財産清算人が管理・処分し、未払いの税金などを清算した上で、残余財産を国庫に納付することになります。2022年度の相続人不在財産は768億円に達し、過去9年間で2倍以上に増加しています。また、相続人不在財産の増加に伴い、「相続財産清算人」の選任件数も増加しています。2022年度は6653件と過去最多を記録しました相続財産清算人の選任件数は年々増加しています。
以下はその推移です。

2016年:4817件
2017年:5024件
2018年:5101件
2019年:5184件
2020年:5818件
2021年:6233件
2022年:6653件

2. 相続人不在財産が発生するケース

相続人不在財産が発生するケースとしては、以下のようなものがあります。

・身寄りのない高齢者が亡くなった場合
・相続人がいるが、関係が途絶えていて相続放棄された場合
・遺言書を作成していない場合

特に、近年増えているのが、身寄りのない高齢者が亡くなった場合です。高齢化社会の進展により、一人暮らしの高齢者が増えていることが背景にあります。

3. 相続人不在財産の処理の流れ

相続人不在財産の処理の流れとしては、以下のようになります。

相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の清算人を選任します。

 相続財産清算人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。

・利害関係人(被相続人の債権者,特定遺贈を受けた者,特別縁故者 など)検察官が家庭裁判所に申し立てを行う
・家庭裁判所が相続財産清算人を選任する
・相続財産清算人が被相続人の財産を調査する
・未払いの税金などを清算する
・財産を売却する
・売却益を国庫に納付する

相続財産清算人は、弁護士などの専門家が選任されることが多いようです。

4. 相続人不在財産の課題

相続人不在財産には、以下のような課題があります。

・財産が本来の持ち主の意思とは異なる人に渡ってしまう可能性
・財産の売却手続きに時間がかかる
・自宅マンションの管理費滞納などの問題が発生する可能性

被相続人の意思とは関係なく、財産が国庫に帰属してしまうため、本来の持ち主の意思が反映されないという問題があります。
また、財産の売却手続きには時間がかかり、実際に国庫に納付されるまで数年かかる場合もあります。さらに、相続人不在財産となったマンションの場合、管理費滞納などの問題が発生することもあります。

5. 所有者不明マンション問題

問題点

相続人が不明のまま放置される分譲マンションが増加しています。住んでいた人が亡くなり、相続人がわからないため、所有者不明の「空き部屋」が増えています。これにより、管理費の滞納や建物の劣化といった問題が発生しています。国土交通省の調査によると、所有者の所在がわからない部屋が存在するマンションは全体の3.9%に上ります。特に、1979年以前に完成したマンションではその割合が高く、13.7%に達しています。この問題は、高経年マンションの増加とともに、さらに深刻化する恐れがあります。

・従来の解決策

管理組合が「相続財産清算人」を選任し、その部屋を売却することで管理費の滞納分を回収する方法があります。

・問題点
全財産を調査するのに時間がかかり、管理組合の負担が大きいこと。

・新制度「所有者不明専有部分管理人」

所有者が不明な場合や所在がわからない場合、裁判所に申し立てて「所有者不明専有部分管理人」を選任することができます。これにより、マンションの部屋だけを清算できるため、従来の方法よりも短期間で解決でき、管理組合の負担が軽減されることが期待できます。
法制審議会は今年2月にこの新制度を区分所有法の改正要綱に盛り込み、答申しました。

・期待される効果

所有者不明の空き部屋の管理や売却が促進され、マンション全体の円滑な運営に貢献します。
高経年マンションの増加に伴い、この新制度はますます重要性を増していくことが期待されています。

6. 相続人不在財産を防ぐ対策

相続人不在財産を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

・遺言書を作成する
遺言書を作成することで、自分の財産を誰にどのように相続させたいかを明確にすることができます。遺言書があれば、親しい親族や世話になった第三者に財産を残すことができます。特に一人暮らしの高齢者にとって、遺言書を通じて自分の財産をどうするか考えることは非常に重要です。

・相続人と円滑な関係を築く
日頃から相続人とコミュニケーションをとり、円滑な関係を築いておくことが大切です。相続について、生前に家族間で話し合っておくことで、トラブルを回避することができます。

・専門家への相談
特に重要なのは、生前に専門家に相談し、支援を受けることです。
専門家は、相続に関する法律や手続きについて詳しく知っており、適切なアドバイスを受けることができます。専門家は、遺言書の作成や相続対策について具体的なアドバイスを提供します。また、財産の分割や相続手続きに関するトラブルを未然に防ぐことができます。専門家の支援を受けることで、自分の意志に基づいた財産の分配がスムーズに行われるでしょう。

7. まとめ

相続人不在財産や所有者不明マンション、空家等などの問題は、近年深刻化しています。相続人不在財産の増加は、社会全体で取り組むべき課題です。
個人としても、遺言書の準備や専門家への相談を通じて、自分の財産が適切に処理されるよう備えることが重要です。

参考情報

最高裁判所:https://www.courts.go.jp/saikosai/index.html
法務省:https://www.moj.go.jp/
国土交通省:https://www.mlit.go.jp/

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